甲状腺・内分泌疾患について

内分泌疾患は、ホルモンを分泌する臓器(内分泌腺)の異常により生じる疾患の総称です。甲状腺、副腎、下垂体、副甲状腺などから分泌されるホルモンの過不足により、全身に様々な症状が現れます。症状が多彩で他の疾患と間違えられやすいため、専門医による適切な検査と正確な診断が重要です。
こんな症状ありませんか?
- 疲れやすい、だるさが続く、やる気が出ない
- 動悸、手の震え、汗をかきやすい
- 体重の急激な増減がある
- 首の前面が腫れている、違和感がある
- 髪が抜ける、肌が乾燥する、むくみがある
- 月経不順、不妊で悩んでいる
- イライラする、または気分が落ち込む など
甲状腺・内分泌疾患の種類と症状
甲状腺疾患
甲状腺は喉仏の下にある内分泌器官で、全身の新陳代謝を調節する甲状腺ホルモンを分泌します。機能異常により、亢進症では動悸や体重減少、低下症では倦怠感やむくみなど全身に多様な症状が現れます。
バセドウ病(甲状腺機能亢進症)
自己免疫により甲状腺ホルモンが過剰分泌される疾患で、動悸、体重減少、手の震え、発汗過多、眼球突出などが現れます。若い女性に多く、男女比は1:4程度とされます。
橋本病(慢性甲状腺炎)
甲状腺の慢性炎症により機能が低下する疾患で、疲労感、むくみ、便秘、体重増加などの症状が出ます。甲状腺機能低下症の主要な原因となりますが、特段の治療が必要ないケースもあります。
亜急性甲状腺炎
ウイルス感染が関与すると考えられる甲状腺の炎症性疾患です。「甲状腺のかぜ」と言える状態で、甲状腺部に強い痛みを伴うほか、一時的に甲状腺機能亢進症状が現れます。
結節性甲状腺腫(甲状腺のしこり)
甲状腺にしこりができる疾患で、90%以上は良性(腺腫様甲状腺腫、甲状腺嚢胞など)です。多くは無症状で検査により発見されます。ただし、2cm以上の腫瘤や、1cm以上で悪性所見がある場合は精密検査が必要です。
甲状腺がん
甲状腺に生じる悪性腫瘍です。進行が遅く、予後も良好なタイプ(乳頭がん)がほとんどなので、比較的おとなしいがんと言えるでしょう。ただし、予後不良なタイプ(未分化がんなど)もあるため、定期的な経過観察が重要です。
副甲状腺疾患
副甲状腺は甲状腺の裏側にある米粒大の器官で、血中カルシウム濃度を調節する副甲状腺ホルモン(PTH)を分泌します。機能異常により、亢進症では高カルシウム血症による骨粗鬆症や腎結石、低下症では低カルシウム血症によるしびれや痙攣などが生じます。
原発性副甲状腺機能亢進症
副甲状腺の腫瘍や過形成によってPTHの過剰分泌が起こり、高カルシウム血症を生じる疾患です。80%以上は良性腫瘍が原因ですが、一部は遺伝性の病気や副甲状腺がんなどが関係するため、的確な鑑別が必要です。
副甲状腺機能低下症
PTH分泌低下により、低カルシウム血症や高リン血症を生じる疾患です。カルシウム不足により神経・筋症状が現れます。副甲状腺の手術後に起こるものを除けば、日本では比較的まれな疾患です。
下垂体疾患
下垂体は脳の底部にある小さな内分泌器官で、「ホルモンの司令塔」として他の内分泌腺を制御します。腫瘍による圧迫や機能低下により、成長ホルモンや性腺刺激ホルモンなどの異常が生じ、全身に多彩な症状が現れます。
先端巨大症
下垂体腫瘍から成長ホルモンが過剰分泌される疾患です。成人では手足や顔の末端部分が肥大し、特徴的な外見変化を生じます。下垂体に生じた腫瘍が原因となることが多く、治療は腫瘍摘出手術が基本となります。
プロラクチノーマ
プロラクチン産生下垂体腫瘍により乳汁分泌ホルモンが過剰となる疾患です。若い女性に多く、月経不順、乳汁漏出、不妊などの原因となることがあります。
汎下垂体機能低下症
下垂体前葉ホルモンが複数、または全て分泌不全となる疾患です。腫瘍、炎症、外傷などが原因となり、欠乏ホルモンにより多彩な症状を呈します。
成人成長ホルモン分泌不全症
成人で成長ホルモンの分泌が低下する疾患です。成長ホルモンの低下により倦怠感、筋力低下、集中力・気力低下、抑うつ、性欲減退などが生じます。
副腎疾患
副腎は腎臓の上にある小さな器官で、ストレス対応や血圧調節に関わるホルモンを分泌します。異常が起こると血圧や血糖に影響します。
原発性アルドステロン症
副腎からアルドステロン(血圧を上げ、塩分を体内に保持するホルモン)が過剰分泌される疾患です。副腎に生じた腫瘍、または過形成が原因です。病気が原因で起こる高血圧(二次性高血圧)の主な原因となっています。
クッシング症候群
副腎皮質ホルモン(コルチゾール)過剰により生じる疾患です。中心性肥満、満月様顔貌、高血圧、糖尿病などが生じます。
褐色細胞腫
副腎髄質などの腫瘍から、ストレスホルモンが過剰分泌される疾患です。発作性高血圧、頭痛、動悸、発汗過多が生じます。放置すると高血圧クリーゼ(血圧の急上昇による急性症状)のリスクがあります。
副腎皮質機能低下症(アジソン病など)
副腎皮質ホルモン欠乏により生じる疾患です。全身倦怠感、低血圧、低血糖、色素沈着などが現れます。副腎皮質ホルモンの急激な不足(副腎クリーゼ)は命に関わることもあります。
糖尿病と内分泌疾患の密接な関係
内分泌疾患と糖尿病は相互に影響し合う関係にあります。甲状腺機能亢進症では代謝亢進により血糖値が上昇し、副腎皮質ホルモン過剰も糖代謝を悪化させます。また、逆に長期の高血糖は内分泌腺の機能に影響し、特に1型糖尿病では自己免疫性甲状腺疾患の合併が多く見られます。このため、糖尿病患者様では定期的な内分泌機能検査が推奨されます。
当院での診療
今福つるみ内科皮フ科クリニックでは、内分泌代謝科専門医である院長が内分泌疾患の診療を行います。院長は糖尿病専門医でもあるので、糖尿病との関連を考慮した総合的な診断と治療を提供いたします。
血液検査の主な検査項目
- TSH(甲状腺刺激ホルモン):脳下垂体から分泌され、甲状腺の働きを調節するホルモン
- FT3(遊離トリヨードサイロニン):甲状腺ホルモンの一種で、体の代謝を活発にする作用が強い
- FT4(遊離サイロキシン):甲状腺ホルモンの一種で、全身の新陳代謝を調節する
- コルチゾール:副腎皮質から分泌されるストレス対応ホルモン
- ACTH(副腎皮質刺激ホルモン):脳下垂体から分泌され、副腎皮質の働きを調節するホルモン など
治療方針
治療が必要な場合には、主に薬物療法によってホルモンバランスを整え、症状を改善します。薬物療法による改善が難しいケースでは、手術やアイソトープ治療(放射線治療)が必要になります。専門医として治療のタイミングを適切に見極め、必要に応じて提携先の医療機関をご紹介します。