皮膚の乾燥について

皮膚の乾燥(ドライスキン)は、医学的には「乾皮症」と呼ばれる状態です。皮膚表面の水分や油分が不足し、本来のバリア機能が低下することで様々な症状が現れます。
肌の乾燥は単なる美容上の問題ではなく、かゆみや炎症を引き起こし、湿疹などの皮膚疾患につながることもあります。また、皮膚のバリア機能が低下することで、外部からの刺激に敏感になり、感染症のリスクも高まります。
乾燥肌の症状と特徴
乾燥した皮膚は、カサカサとした手触りになり、白い粉をふいたような状態になることがあります。特に顔や腕、すね、かかとなどで目立ちやすく、悪化するとひび割れや赤み、かゆみなどを伴います。
症状は季節によっても変化し、特に空気が乾燥する冬場に顕著になります。また、入浴や洗顔によって皮脂や角層内の保湿成分が流れ出てしまうことで、症状が悪化することも多いです。
随伴症状
乾燥に伴って現れる症状として、かゆみが非常に多く見られます。掻くことで皮膚に傷がつき、さらにバリア機能が低下するという悪循環に陥るので注意しましょう。
また、乾燥が進行すると皮膚に細かいひび割れが生じ、チクチクとした痛みを感じることもあります。重症化すると湿疹や皮膚炎に移行し、治療に時間がかかることもあるため、早めの対処が重要です。
皮膚が乾燥する原因
環境要因
空気の乾燥、特に冬場の低湿度環境は皮膚の水分を奪います。エアコンや暖房の使用により室内の湿度が下がることも大きな要因です。紫外線も皮膚のバリア機能を低下させ、乾燥を促進します。
生活習慣
熱いお湯での入浴、ゴシゴシと強くこする洗い方、洗浄力の強い石鹸の使用などは、皮膚の保護膜を過度に除去してしまいます。また、保湿ケアの不足、偏った食生活、睡眠不足なども乾燥の原因となります。
加齢による変化
年齢とともに皮脂分泌量が減少し、皮膚の保水力も低下します。特に60歳を過ぎるころには、全身の乾燥が進みやすくなります(※)。
※個人差があります
乾燥が関わる主な皮膚疾患
皮脂欠乏症
皮脂や水分の不足により、皮膚表面がカサカサになる状態です。特に高齢者に多く見られ、強いかゆみを伴うことがあります。適切な保湿ケアを行いつつ、必要に応じて外用薬による治療を実施します。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎の患者様は、皮膚のバリア機能が弱っており、乾燥しやすくなっています。乾燥により症状が悪化するため、保湿ケアが治療の基本となります。
乾癬
乾癬では皮膚の新陳代謝が異常に早くなり、厚い鱗屑(りんせつ)を伴う乾燥した皮疹が現れます。長期的に症状を繰り返す病気ですので、保湿と専門的な治療の併用・継続が必要です。
みずむし(白癬)
みずむし(白癬)は、皮膚の乾燥によるひび割れから菌が侵入しやすくなります。また、乾燥型の白癬では、かゆみとともに皮膚がカサカサになり、細かい皮むけを生じます。
日常生活での対処法
肌の水分量と皮脂量を減らさないことが、乾燥対策に重要です。適切な保湿ケアを行いつつ、入浴時や洗顔時は皮脂を落としすぎないように工夫しましょう。
ただし、ケアを続けても乾燥が改善しない場合には、皮膚科専門医のいる今福つるみ内科皮フ科クリニックへご相談ください。
十分な保湿ケア
- クレンジング料や洗顔料は低刺激タイプのものを選ぶ
- こまめな保湿を心がける(基本的に何度行っても構いません)
- 入浴後や洗顔後はたっぷりの化粧水で水分を補い、クリームなどで保湿する など
皮脂量を保つ工夫
- お湯の温度は38~40℃程度のぬるめに設定
- 刺激の少ない弱酸性のボディソープを使用
- 手のひらや柔らかい布で洗う
- 入浴後はタオルで押さえるように水分を拭き取る(擦り過ぎない) など
生活環境の改善
- 室内の湿度を50~60%に保つ(加湿器の使用)
- 冷暖房の風が直接当たらないよう工夫する
- インナー類には綿などの天然素材を選ぶ
- 十分な水分摂取を心がける
- バランスの良い食事と十分な睡眠を心がける など