糖尿病の合併症について

糖尿病の合併症は、長期間の高血糖により全身の血管や神経が障害されることで起こる様々な病気の総称です。糖尿病そのものよりも、これらの合併症が生活の質を著しく低下させ、時には生命を脅かすこともあります。
合併症は大きく「細小血管障害」「大血管障害」に分類され、いずれも発症自体がQOL(生活の質)を低下させる要因となります。合併症を起こす前に適切な血糖コントロールを行い、未然に防ぐことが重要です。
細小血管障害
高血糖状態の持続によって、全身の毛細血管が障害されて起こる疾患群です。糖尿病の合併症としてよく見られる疾患群であり、「糖尿病の三大合併症」とも言われます。
糖尿病網膜症
目の奥にある網膜の血管が障害される病気で、緑内障などと並んで日本における失明原因の上位を占めます。初期は自覚症状がありませんが、進行すると視力低下、飛蚊症、視野欠損などが現れ、最終的には失明に至ることもあります。
徐々に進行するため、発症に気づきにくいのも糖尿病網膜症の怖い点です。糖尿病の方は、年1回以上の眼科検診により早期発見し、レーザー治療などで進行を抑えることが重要です。
糖尿病腎症
腎臓の濾過装置である糸球体が障害され、腎機能が低下する病気です。初期は尿中に微量のタンパク(アルブミン)が出る程度ですが、進行すると大量のタンパク尿、むくみ、高血圧などが現れます。末期には腎不全となり、人工透析が必要になります。
糖尿病性神経障害
高血糖により末梢神経が障害される合併症です。手足のしびれ、痛み、感覚低下から始まり、進行すると自律神経障害も起こります。
足の感覚が鈍くなると、傷に気づかず重症化することがあり、そのまま細菌感染を起こすことがあります。感染した組織が壊疽(えそ)すると、最悪の場合、切断が必要になります。
大血管障害
重要な臓器に血液を送る大血管が障害されると、命に関わる重篤な疾患を引き起こすリスクが上昇します。
心血管疾患(狭心症・心筋梗塞など)
心臓の血管(冠動脈)が動脈硬化により狭くなったり、詰まったりする病気です。胸痛、息切れ、動悸などの症状が現れますが、糖尿病による神経障害があると痛みを感じにくく、発見が遅れることもあります。
脳血管疾患(脳梗塞・脳出血など)
脳の血管が詰まったり破れたりする病気です。発症自体が命に関わるほか、一命を取り留めても片麻痺、言語障害、意識障害などの後遺症を残すことが多いです。要介護の主要な原因となります。
その他の合併症
感染症のリスク増大
高血糖により免疫力が低下し、様々な感染症にかかりやすくなります。尿路感染症、皮膚感染症、歯周病などが代表的です。また、感染症により血糖コントロールが悪化する悪循環も起こります。
歯周病
糖尿病と歯周病は相互に悪影響を及ぼし合います。糖尿病により歯周病が悪化しやすく、歯周病により血糖コントロールが悪化します。糖尿病の方は、定期的な歯科検診も重要です。
認知症
糖尿病があるとアルツハイマー型認知症や、血管性認知症のリスクが高くなると言われています。血糖コントロールの改善により、認知症のリスクを下げることができます。
合併症を防ぐために
今福つるみ内科皮フ科クリニックでは、糖尿病専門医が合併症の予防と早期発見に取り組んでいます。院内で皮膚科との連携によるフットケアを実施しつつ、提携する眼科、歯科とともに総合的な合併症管理を行っています。定期的な検査と適切な治療により、合併症から大切な体を守りましょう。